「これだけはケチるな」と教わった、ライフジャケットの真実。
「落ちなきゃいいんでしょ」と思っていた。海に立つ恐怖を知るまでは。
最初に釣具屋へ連れていかれたとき、「高いロッドを買う予算があるなら、まず何よりも先にまともなライフジャケットを買え。それをケチる奴は海に立つ資格はない」と厳しく言われた。オカッパリ(陸っぱり)の釣りであっても、それは絶対に譲れない命の最後の砦なのだ。俺が実際に勉強して買い揃えた、ライフジャケットの2大タイプと、命を守る本当の基準をまとめる。
① 膨脹式ライフジャケット(肩掛け型・腰巻き型)
水に落ちるとセンサーが水分を感知し、ボンベから二酸化炭素が一瞬で送り込まれてバルーンのように自動で膨らむ仕組みだ。(手動で紐を引いて膨らませることもできる。)
最大の長所は、非常に軽くて夏場でも一切蒸れず、キャスティングなどの激しい動きを全く妨げないこと。オカッパリからのルアーフィッシング全般に一番好まれるタイプだ。ただし、磯場などの鋭く切り立った岩や、びっしり張り付いた牡蠣殻(カキガラ)に接触すると、気室が破れてしぼんでしまう致命的なリスクがある。また、定期的にボンベやセンサーモジュールの点検・交換といったメンテナンスが必要不可欠だ。
② 固型式ライフジャケット(フローティングベスト)
内部にポリエチレンなどの発泡浮力体がぎっしり組み込まれているタイプ。何かに擦れても「破れてしぼむ」心配が物理的に一切存在しない。
長所は、磯や防波堤のコンクリート、テトラ帯で転倒した際、強固なプロテクター(衝撃吸収材)としても機能してくれること。また、全面に多数のポケットが配置されており、ルアーケースや小物を大量に収納できる実用性の高さもある。そのため、磯場やテトラ帯へ向かう際はこれの着用が絶対条件となる。短所は、かさばりやすく、夏場は体温がこもって非常に蒸れて暑いことだ。
「股ベルト(又紐)をしていない固型式ベストは、ただの重りになる」
俺が一番驚き、ゾッとしたのがこの知識だ。フローティングベストを着る際、股の間を通す「股ベルト」を確実に締めなければならない。
これをしていない状態で海に転落すると、水の強力な浮力によってベストだけが一気に上にずり上がってしまう。結果として、両手が万歳をした状態(万歳落水)で頭が水中に引き込まれ、ベストを着ているにもかかわらず溺死する事態を招く。「股ベルトをしないのは、着ていないのと全く同じ」という言葉を、俺は今でも肝に銘じている。